ラワン・セラヤ・メランティ
「ラワン」という材の名前は、誰もが一度は耳にしたことがあると思いますが、どのような印象がありますか。
最も良く知られているのは「ラワンベニヤ」としてでしょうか。国内で最も普及しているベニヤで、表面が多少ザラつきのある薄いピンク色~淡褐色のベニヤです。
また、無垢材としては室内造作や建具、家具などにも利用され、比較的安価であるため利用しやすい材といえますが、イメージとしては他の材より一段低く見られる傾向があります。
それは戦後の高度成長期に東南アジアより大量に輸入され、国内で大量消費されたことで安価なイメージがついた為だと考えられます。
ただし、最近は輸入量も減少し、数年前には供給が滞り市場が混乱するという事もありました。材としては優秀で変形がほぼせず加工や塗装も良好で、現在も各種技能検定には使用されています。
ところでこの「ラワン」という名称ですが、東南アジアから輸入されるフタバガキ科の木材の種類で、産地により名称が異なります。
ざっくりと理解するところでは「ホワイトラワン」はフィリピン、「ホワイトセラヤ」はマレーシア・サバ州、「ホワイトメランティ(メランチ)」はインドネシア及びマレーシア・サラワク州と理解しています。(フタバガキ科は種類が多く、近似種も多い)
また、材面にストライプ状の「リボン杢」が出る物もあります。(相逆目・両逆目とも呼ばれ、削り加工は慎重を期す)
※リボン杢と漣(さざなみ)状の杢の材で造作した階段板
室内の造作材として、家具・建具材として非常に重宝する材と言えますが、供給は輸出国の状況に頼らざるを得ず、いずれは入手困難な材になるのではと危惧しています。限りある資源の保護と有効利用とを両立させて、供給する国と消費する我々の双方が納得し、且つ環境に負荷をかけない状況が作り出せないものかと考えてしまいます。
※表題の写真は未加工の材(左)と、表面プレーナー削り加工した材
※参考文献 「新編輸移入原木図鑑 改訂版」 1976年 社団法人全日本検数協会
※参考文献 「熱帯雨林」 湯本貴和著 1999年 岩波書店
※追記 「炎熱商人」 深田祐介著 1982年 文藝春秋社 「戦後フィリピンからラワン材の買い付けをする商社マンを中心とした壮大な人間ドラマ」 直木賞受賞作 ご参考まで