製材
この日はお客様にお買い上げ頂いたケヤキ材を製材するために、新木場の製材所におりました。
このケヤキ材は、製材後約3年天乾した材で、厚み66㎜、長さ2,000㎜、片耳幅500㎜(中央寸検)の材です。(☞『割れ止め作業』参照)
状態としては、わずかな変形(長さ方向の曲がり)がありましたが、他には大きな変化は無く、当初見られた木口割れは、鎹(かすがい)を打ち込んでおいた為か広がってはいませんでした。
片耳は昨年に手入れした時に、ピンホール(虫食い穴)のあった白太部分を落とした為で、その後に防虫剤を塗布した効果か他の部分の被害は認められませんでした。(☞『天敵再び』参照)
お客様の依頼は片耳を活かした洗面台を作るに当たり、重量を軽くする為厚みを66㎜→50㎜にするというものです。通常製材では両面を真っすぐに製材し、均一な厚みにするものですが、今回のお客様は木表は手を付けずに木裏面のみ製材して欲しいとの要望でした。
一般に木表は木裏よりも木目が引き立つとされています。ですから木目を強調する使い方の場合は木表を上にします。ただし今回のお客様はその様な理由ではなく、なるべく手をかけない最低限の加工のみで、粗い表情も、傷も、欠点もそのままにするというものでした。
日本の木の文化は多様で、無節の柾目の通った材や美しい板目の赤身の材、反りや曲がりの無いきちんと手入れされた材が高く評価される一方で、節(生き節)の表情を楽しむ節板や、わざわざカビを付ける錆丸太(さびまるた)、長年の使用で白く色落ちした水車の板や、和船の櫂や舟板などは、銘木の分野では装飾材として扱われる一面もあります。
しばらく前から静かに広まっていた古材を建材に再使用したり、内装材に再利用するという事もそういった木を慈しむ、楽しむ文化の流れの中にあるものだと思います。
材木の使われ方は様々で面白いと感じます。どのような使い方であっても自由です。そしてそのようなお客様のご要望に応え続けたい、その様な材木店であり続けたいと思っております。