材木の雑学知識
昨年の12月から最近にかけて、当店ではチーク材やウォルナット材などの高級家具用材の注文が増えている印象があります。
以前に新木場の広葉樹問屋に勤めていた頃には、ある特定の樹種が大量に使われる時があり、一問屋で用意出来ない場合には、新木場の広葉樹問屋同士で材を融通しあったりという様な事が度々ありました。
これは大きなビルやホテル、ゴルフ場などの建築に際し、内装や家具類を特定の樹種で揃える事によるものです。特に高級な建造物の場合には、あまり流通していない樹種が選ばれる事があり、これまでに「ウェンジ」、「シルバーハート」、「ウォルナット」といった樹種を扱った事があります。
あまり流通量がない樹種を使う計画の場合は、2~3年前には建築会社から材の引き合いがあり、それに合わせて材を調達したり、製材・乾燥をして材を準備していました。
また、以前に家具メーカーの担当者に伺った話では、市場調査や消費傾向などを踏まえて、メーカーから特定の樹種によってブームを作り出そうとする事もあるそうです。その場合にも特定の樹種が大量に使われるという事になります。
ただし、今回の当店のチーク材やウォルナット材の注文が増えた事はそれらとは関係がなさそうで、たまたま注文が重なっただけの様です。
このチーク材ですが、過去に面白いエピソードがあります。それは学生さんがチーク材を学校で製材して、「色が違う、これはチークじゃない」と言ってきた事がありました。チークは厚盤などを製材すると色が初めは白っぽい場合があります。学生さんはその事を言ってきたのだと思い、「日光に2~3時間当てれば茶色になるよ、やってみて」と説明したところ、翌日に「チークでした」と連絡をもらった事がありました。実はこの様に言われる事は度々あり、その都度説明してきたのですが、最近は購入される時点であらかじめ説明する様にしています。
このチーク材の様に使用時に知っておきたい特色を持った材はいくつかあります。そのうちの「ウォルナット」と「クワ(桑)」も興味深い特徴があります。
材木の中には鉄に反応して変色する材があります。「ナラ」、「クリ」、「クルミ」、「ウォルナット」も鉄汚染します。
「クリ」も以前に洗面台に使用した方が「黒く汚れた」とクレームを言ってきた事があり、材の特色を根気よく説明しなんとか理解してもらった事がありました。(その時は家具工房から対応を頼まれました)
※写真は鉄の刃物を研いだ水で「鉄」と書いた「ウォルナット」と、削り加工した「クワ」と「ウォルナット」に石灰水を塗ったもの「クワ(桑)」は製材時は明るい色をしていますが、時間の経過につれ暗色になっていきます。ただし、瞬時に色を濃くするやり方もあります。石灰を水で溶いて塗るとすぐに暗色に変化します。「クワ」の他にも「キハダ(黄肌)」、「クリ(栗)」なども同様です。(「ウォルナット」も反応しています) ※「クワ」は表題の写真の材を削り加工して明るくなった材
材木を利用する時は、材の特色をある程度知っておいてもらいたいです。その為にはこちらも丁寧に説明する様に心がけますので、どうぞよろしくご理解をお願い申し上げます。
「ウェンジ」 : マメ科 唐木のタガヤサン(鉄刀木)に似た黒色系の材 重く強度がある 加工は難儀
「シルバーハート」 : アカテツ科 「アニグレ」明るい色調とソフトな木目、縮杢の材は「サテンシカモア」の商品名
「チーク」 : クマツヅラ科 高級家具用材、ほぼ変形せず水湿にも強い 独特の芳香がある 切削は刃物の傷み注意