槐 (エンジュ)
写真は槐(エンジュ)の板材、丸太、ペン立て(赤身・白太を面白く加工した塗装済み木工製品。購入品)
槐材、正確には「イヌエンジュ」材です。マメ科 「木材ノ工藝的利用」、「大日本有用樹木効用編」より引用すると、
「材の杢理並びに心辺材の色著しく異なるを利用す。-床柱、落掛、床框」 *建築様式の床の間の構成部材
「材の切味軽快にして杢と鬆(ス)とを利用す。-置物彫刻」 *鬆(ス)-粗い木目の事か?もしくは洞(うろ)の材の事か?
「材の木理、色澤並びに狂い少なきを利用す。-洋家具、和風指物(置棚、茶棚、机卓、花台)ラケット、額縁、洋風建築及び彫刻、将棋駒、挽物、煙草盆、鏡台、針箱、箸箱等寄木」
「材の粘り、靭(しな)やかさ、曲げやすさを利用。-ちょうな柄」 *ちょうな(釿、手斧)-大工道具で材の表面を荒削りする用途に使う
「材の木理美にして音響の伝導に適するを利用す。(代用)-三味線胴、月琴胴」 *月琴-中国発祥の弦楽器 胴が円形で満月を連想させる事が由来ともいわれる
「材は雅美あるをもって指物及び旋削用材に供す。床柱、斧の柄、農具の柄、馬鞍、鼓の胴などを作るに用いる。特にちょうな、改良鍬の柄にはこの材を賞用す。日光地方の如きはちょうなの柄に供するために、この樹の細幹を切り出すこと多し。これこの材は撓曲部分湿気のために異常を起し原型に復することなきをもってなり、しかして曲ぐるには蒸気をもって柔軟ならしめ模型にて圧縮す。また北海道にては鉄道まくら木その他の上等用材に供す。」 *蒸気で曲げてちょうなの柄を作るが一度曲げた材はその形状を保つ
※ 明治時代の文献のため、聞きなれない用語が多いです。また現在の状況では当てはまらない事柄も有ります。
国産の材木の中では色の濃い方の材で桑の代用に使われる事も有ります。中国などからの輸入材もありますが、流通量は多くはありません。
赤身、白太の色のコントラストが面白く、床柱など和室の造作や北海道の置物彫刻(コロポックルなどアイヌ彫刻)などによく用いられます。
木へんに「鬼」の漢字から良くない印象を受け取られやすいですが特に悪い意味は全くなく、逆に縁起の良い意味で使われる事の方が多い貴重な材です。
*「木材ノ工藝的利用」 明治45年 農商務省山林局 編; 出版者: 大日本山林会
*「大日本有用樹木効用編」 明治38年 諸戸北郎 著; 出版者: 嵩山房