とても重要な乾燥作業
広葉樹をお客様に提供する上で気を付ける事はいくつもありますが、最も重要視するのはしっかりと乾燥させた材を提供するという事です。
私が広葉樹問屋にいた頃、材木を乾燥させる作業はメインの作業といっても過言ではない位重要でした。主に北海道や東北地方の製材所から送られてくる生材(製材したての材)を八分角の桟棒(スジ棒とも)を等間隔に並べ材木を高く積んでいきます。4メートルほどの高さに積み上げ一番上に雨除けの板を取り付けます。多くの広葉樹問屋で見られた光景で、その積み方の正確さで店のレベルが分かるようでした。今でも新木場では見られますが数店ほどです。これにはいくつかの理由がありますが、在庫を減らし商品の出荷の回転率を上げるため、また人乾材(人工乾燥材)の仕入れを増やし重労働の桟積み作業を省略するなどいろいろな理由があると思われますが、見慣れた光景が無くなる事に寂しさを覚えます。
材木の種類にもよりますが天乾は「一寸/一年」が大体の目安です。また、天乾(天然乾燥)では含水率15%程度が乾く限度です。ここまで乾かせば良く乾燥した材と言えます。厚さのある材や比重の大きい材などは5年~10年乾かす事も珍しくありません。割れを防ぐための処置をしたり、反りを防ぐために積み替えをしたり面倒で重労働ですが重要な作業です。
天乾時に気をつける事に白太使いの樹種の桟積み跡が残るという点があります。白太使いの樹種(ブナ、カエデ、トチ、シナなどなど)に限らず全ての樹種にあてはまりますが、特に白太使いの樹種はうっすら目立ちます。この対策として桟棒に溝を付け接地面を小さくするなど工夫をする所もありますが、全く跡が残らないという事はありません。これは海外でも同じ様で「stick-mark」と呼ばれその対策も色々で螺旋状に加工した丸棒を何かの資料で見た記憶があります。
最近は天乾材より人乾材(人工乾燥材)の流通が多くを占めその重要性が広く認知されていますが、人乾材も天乾工程をしっかり行う事が絶対に必要な作業である事は言うまでもありません。
天乾材であれ人乾材であれ、しっかりと乾燥した材を使う事によってその後の、変形、割れ、色染み、虫害、臭みなどを防ぎ製品や作品のクオリティを高く保つことが出来るのだと思います。その為に我々材木屋は陰ながら努力をしています。その事を皆様に少しでも知って頂ければ腰痛になる程の重労働も報われます。