ある日の仕事

先日、指物の技術を修練中の若い方と、材木の選別と製材を行うために新木場で待ち合わせをして半日弱過ごして来ました。
それまでにもメールを通して幾度か材をご注文頂いてはいましたが、メールの画像越しよりも直接ご自分の目で見ていただいた方が納得のいく材をご提供できますし、材木関連の業種が集まる新木場の雰囲気と現状を知ってもらえる機会だと思いました。
普段はクワ、キハダ、トチ、キリ他をお使いとの事でしたがこの日はタモをお求めでした。実際の仕上がり厚は7ミリ程度との事でしたが、現在タモの一番薄い厚みの規格の在庫は九分板(27ミリ)ですので製材で厚みを二枚割りにする必要があります。(11~12ミリ程度)
お求めのタモ材は幅七寸(210ミリ)以上で木目のおとなしい材との事でしたが、バンドル全体でも幅広材は少なく目も粗い材が多い現状をご理解頂けたと思います。その中から幅230ミリと310ミリの材をお選びいただき、製材所で厚みを二枚割りにしました。
お話を伺うと現在大学生のこの方は、中学生の頃から指物をしっかりとした方の下で指導を受けているとの事でした。態度もとても礼儀正しく、作品も画像で拝見致しましたがとても素晴らしかったです。大学生ゆえに就職も考えなくてはならないとは思いますが、はたして木工家としての進路は選択肢にあるのだろうかと考えてしまいました。
当店には家具・木工業や工芸作家を志す若い方も多くお見えになります。しかし独立して工房を構え順調に注文を受けるまではなかなか大変な事の様に見えます。しばらく前には会社員を辞めて職業訓練校を経て独立を目指す方がブームと言える程の時期もありましたが、現在はあまり聞かなくなりました。現実はとても厳しかったのではないでしょうか。
当店にお見えになる若い方には、なるべく予算や情報の提供など親身に対応する様にしています。それは若い方の自立を応援する事でもあり、それによってお互いに長くお付き合いできる良い取引相手同士になればと願う気持ちからです。
大学生の彼にはどうかご自身のご希望の進路に進める様に願っておりますし、これからも応援して行きたい気持ちです。