褪色と経年変化
美大生や専門学校生の、卒業制作に向けての材料の注文や相談を受ける時期になって来ました。毎年、学生さんには材木選択の基準として、次の様なアドバイスをしています。
1. 予算を決める
2. 脚物などは強度の適した材木を選択する
3. 材の色調の希望があるか?
4. 木目を強調したいか?(環孔材か散孔材か)
5. 幅の広い部材は一枚板か?幅ハギするのか?(幅広の一枚板が無い材もある)
6. 彫刻など手加工の工程があるか?(硬い材は難儀する)
以上の点などをアドバイスして、材を決めてもらう様にしていますが、最近は独自に調べた材木を希望される学生さんも増えてきました。人気があるのが「ウォルナット」、「マホガニー」、「チーク」の高級家具材や、白さの際立つ「メープル」、赤色の強い「花梨(カリン)」や「アフリカンパドウク」などの材を言って来られる方も多いです。黒色系の材も人気があるのですが、「黒檀(コクタン)」や「ローズウッド」は高価で値段を伝えると断念される方がほとんどです。
上の写真の材は「アフリカンパドウク」ですが、製材したては鮮やかな赤色でとても目立ちます。先代の父が原木を製材して林場に並べ立てかけたところ、道行く多くの人が興味深そうに見ていた事を思い出します。しかしこの鮮やかな色は時間と共に褪色し暗褐色になります。
「褪色したアフリカンパドウク」 size 4000 × 750 × 27mm
表題の鮮やかなパドウクはこの褪色した材を削り加工したものしたものですが、この鮮やかさを保つために塗装したり、日光に当てないなど工夫しますが、長い間には褪色する事は避けられません。
褪色と同様に、色が変化するのですがその変わる様を楽しむ材があります。「桑」や「栗」などがそうです。桑は製材直後は明るい黄色がかった薄黄土色ですが、時間の経過とともに濃茶色に変わっていきます。栗は製材直後は白っぽい色ですが、だんだんと濃灰褐色に変化していきます。この様に色の変化で時の移ろいを感じ取るところに、日本人独特の感性が見てとれます。
材木はどの材も古くなると色が変化します。暗色になったり、濃くなったり、逆に色褪せてきたり。これをネガティブに捉えるのではなく、経年変化と楽しみ、受け入れる風潮が広がればと思ってます。