材木雑感
材木屋をやっていますと、短材、製材の落とし(製品を取った残りの半端材)、不良材などが知らず知らずのうちに、どんどんたまっていきます。在庫を減らしたいと思っていてもなぜか増えているということがあります。
新木場の広葉樹問屋で働いていた頃、製材所に行くと製材の残り材の薄材や小さいサイズの板や棒材が束ねられて、埃まみれになって大量に置かれているのを見て、職人さんに何の使い道があるのか聞いたことがあります。職人さんは売り物になるかは分からないが「雑巾摺り」や「埋め樫」、「木摺り」、「ダボ」など使い道はいろいろあると言っていました。使える物を無駄にしないという職人さんの気概に関心した思いがあります。
考えてみると材木は無駄なく使われている素材だと思います。製材の残りはチップや燃料に、廃材はパーチクルボードに再利用され、おが屑も家畜小屋の敷き藁や、おが炭に使われる所もあり、とてもエコな素材と言えるのではないでしょうか。
上の写真はスプルース材の抜け落ちた節ですが、亡き父の趣味の彫刻が施されています。通常なら廃棄される運命ですが、面白い使い方だと思いませんか?。普段は見向きもされない小さな木片にも思いもよらない使い道があるのを見るのは愉快ですし関心いたします。
江戸時代に日本各地を周って素朴な木彫りの仏像を数多く残した円空や木喰はどんな木にも仏様が宿ると考え、雑木を用いています。(上の写真は円空仏でも木喰仏でもありませんが、雑木に彫られた素朴な像です。)ヒノキやケヤキなどの名の通った材木でなくても大切に扱うという所に、木に対する思いが伝わります。
どんな小さな材木も大切にすることは前人達から教わった気がいたします。しかしその事と当店の在庫が増えていく事とは別物です。少しでも在庫が減っていきます様に、木彫りの像にお願いをする事にします。