この木なんの木(その後)
8月29日の日記にて取り上げました樹種名がよく判らない材についてですが、その後にもずっと樹種名を突き止めるための努力は続けておりました。今回はその後の経緯などをお伝えいたします。
前回、日記にて取り上げた数日後に、ご興味を示された方からメールを頂き、干割れなど欠点のために低価格にてご案内申し上げたところ、ご購入を希望されましたので、何とか樹種名を突き止めてお客様にお伝えしたいと考え、色々と調べてみる事にしました。(S様 ご購入ありがとうございました。)
まず、お客様のご希望で両面をプレーナー削り加工を行いましたので、両面の表情がよく判り、樹種名判別の手がかりになると期待をし、あらためて調べてみました。
プレーナー削りをした木裏面
追柾目部分
プレーナー削り加工のために新木場の加工場に持っていきましたので、広葉樹を扱う仲間に見せて意見を聞いてみましたが、誰もはっきりとは何の材かは分からなかったです。「あれじゃないか、これじゃないか」といろいろ材名を挙げはするのですが、自信を持って断定は誰も出来なかったです。
そこで自力での解決を目指し、持てる知識、標本、図鑑、書籍を用いて考えてみました。樹種判別の手がかりとして
1,見た目(木目、色、木口、欠点等)- 茶褐色の散孔材、干割れあり
2,重さ - かなり重い(比重が大きい)
3,匂い、堅さ - 無臭、かなり堅い
4,サイズ、形状、入手先、入手時期 - 国産材か輸入材か不明
(追記 画像でもお分かりの様に削り加工直後は白太(辺材)が目立ちません。時間が経つとハッキリと目立って来るようです。チーク、桑、栗の様に材の色が濃くなる材はあるが、その逆は乾燥材としてこの様な変化は珍しい。)
プレーナー削り加工をした見た目から、前回に思ったアサダ・カバ類ではなさそうでした。洋書の図鑑には「ドッグウッド」、「レッドガム」、「グリーンワトル(アカシア)」などの特徴が似た材がありましたがはっきりとは断定はできませんでした。(実際の材は同じ材でも色、木目、堅さ、重さなど多様で、標本、図鑑は一つの指標でしかありません。)
お客様にはせっかくお買い上げ頂いた材の名前をお伝えできませんでした。私の知識の範囲には収まらない材でありました。どなたかお分かりになられる方がいらっしゃるならばご教示いただければと思う程です。
余談になりますが、現在の広葉樹を扱う材木屋は、取り扱う樹種の数は昔に比べて少なくなっています。私が問屋に入った三十数年前には様々な樹種の取扱いがありました。在庫を揃えて置く事は問屋の役割であると感じていましたし、それが商売上の強みであり、一種のステータスであると感じていました。ただし、多くの種類の在庫を抱える事は、需要の変化によりデッドストックになり易く、またワシントン条約や資源の枯渇により取り扱えない樹種も増え、その様な理由などから現在の新木場の広葉樹問屋は余分な在庫は抱えないようです。このような事から材木屋が普段から接する樹種が昔に比べて少なくなり、知識として蓄積する情報量も減少しています。一方で南米材やアフリカ材など新たな樹種が開発・流通する事もあり、材木屋として日々の努力が求められます。
どの様な業種も自社の商品知識をしっかりと把握しお客様のご要望に適切に応える事はビジネスの基本です。材木屋も例外ではなく、お客様のニーズに対して「適材適所」をアドバイスできる様でなければとは考えております。
それでも、一体何の材だったのか本当に心に引っ掛かります。(fook) お客様には「福を呼ぶ材」(ふく-fook)としてお使いいただければと思います。