木材の魅力って?(印象編)
この頃、近隣を散歩していると建築中の戸建て住宅の現場を良く見かけます。最近の戸建て住宅は外観はとてもおしゃれで、施工期間もスピーディーで、一つの敷地に複数の住宅が効率良く立ち並ぶ様は、一種の爽やかささえ感じる程です。(皮肉じゃありません)
室内もきっとフローリングの床にカウンターキッチンで、食事はテーブルを囲んでの洋式なのだろうと勝手に想像しておりますが、現在のライフスタイルにはこのスタイルが合っていると私もそう思います。
私個人は和室の間取りの家屋で育ちましたので畳敷きの和室の有る方が落ち着きますが、最近の若い方は旅館やホテル以外では、和室で過ごした事が無い方もいらっしゃるのではないかと思います。
私の小さい頃は杉の天井板の複雑な木目に様々な事が連想され、恐ろしく寝付けなかった事や、不思議な妄想が広がった事など色々な感情が生まれた事を思い出します。
杉の天井板の木目もそうですが、木材の木目は千差万別で同じ木目は二つとありません。木目には柾目、板目、杢、節板など、その表情は豊かで複雑で我々の目を楽しませてくれますし、落ち着きや安らぎを与えてくれるとは言えないでしょうか。
この木目だけではなく様々な色彩の材や、様々な形状の材(耳付き材、丸太、コブの材)など、自然からもたらされた人工的ではないというところに、木材の魅力があるとは考えられませんでしょうか?
以前に私が勤めていた問屋に、大手建材メーカーの方が来て材を購入された事がありましたが、その用途は材の木目を元に、プリント(印刷)の木目の合板を作るためでした。この事は無垢材を扱う材木屋としては複雑な思いをした事がありました。まず、本物ではなくイミテーションの物に需要が有るという事に。また価格的にも本物よりもリーズナブルな事に。ただ、本物の木目を借用してまで製品化するという事は、無垢の木材の持つ本物の質感は、やはり広く求められていると感じましたし、イミテーションに完全に取って代わられる事は絶対にないと変な確信もありました。
しばらく前から、民家を解体した際の古材を店舗などに流用する事がトレンドとして静かに広まってきておりましたが、それはただアンティーク調の空間を演出するという事だけではなく、木材の持つ暖かい雰囲気や、落ち着いた感じが得られる様にと、またどこか懐かしい感覚を味わいたいという願望があるのだと感じています。一部の家具にもわざわざキズをつけたり、汚したりしてエイジング処理を施す物もあります。これも古材を使う事と同じ様な理由なのだと考えられます。
無垢の木材の魅力には視覚から得られるものがとても大きな部分としてあると思います。それはヒトと長く共存してきた歴史に根差したもので、感覚的なものなのだと感じています。
*写真は無垢の杉の板目材 : 1,820 × 300 × 7mm
*一部追記しました。