木材の魅力って?(親しみ編)
前回,前々回と、印象(視覚)、香り(嗅覚)、と木材の魅力をお伝えしてきましたが、ヒトの五感のうち味覚を除く、「聴覚」と「触覚」の観点からもご紹介していきます。
ところで、音を発する楽器には様々な種類の木材が使用されていますが、その特性が生かされている事をご存知でしょうか。
・ 直接たたいて音を発する - 拍子木(カシ他)、木琴(ローズウッド、カリン他)、木魚(クスノキ他)、カスタネット(ブナ他)など
・ 弦より音が伝わり共鳴する - 琴(キリ)、ヴァイオリン(スプルース、メープル他)、ピアノ(スプルース、ブナ他) など
・ 気流によって共鳴する - パイプオルガン(スプルース他)、クラリネット(アフリカンブラックウッド(グラナディラ)他)など
・ 獣皮の打撃音が共鳴する - 太鼓(ケヤキ他)、鼓(つづみ:サクラ)など
先人たちは恐らく様々な材で試行錯誤しながら現在の適材にたどり着いたのだろうと想像します。現在では素材が金属や樹脂、電子機器などの楽器もありますが、木製の楽器の優しい音色は残り続けて欲しいと思います。
皆さんも小学校の音楽の授業でカスタネットを叩いたり、木琴を演奏した経験を思い出しませんか?その時の木製楽器の音色の記憶を持ち続けて欲しいものです。
次に「触覚」の観点から魅力を考えます。皆さんは小学校の体育館の床を裸足で歩いた感覚を覚えていますか? 調理実習で握った包丁の柄の優しい触り心地、まな板に包丁がコツコツ当たった感触、工作の授業で木彫りの作品を作った事、回転摩擦で火起こし体験した事など、どなたも木材と触れ合った思い出があるのではないでしょうか。その時の感覚を思い出せますか?
それらの用途に用いられる木材は以下の様な適材が当てはめられてきました。
・ フローリング - カバ、ブナ、ナラ、アサダ、メープル他(材質が堅く、ささくれにくい)
・ 包丁の柄 ― ホオノキ他(油ですべらない、握り疲れにくい、まめが出来にくい)
・ まな板 - ヒノキ、ヤナギ、イチョウ他(刃あたりが優しい)
・ 彫刻材 - ホオノキ、カツラ、ヒノキ他(滑らかな彫り口、どの方向にも彫りやすい)
他にも、積み木(ブナ、メープル他)、将棋盤・碁盤(カヤ、カツラ他)、将棋駒(ツゲ他)、野球のバット(アオダモ、アッシュ、メープル他)など、親しみを持って触れてきた木製品は多いと思います。
それぞれに適材が用いられる理由がありますが、最近は木資源の減少や、新素材の研究・開発が進んだ事もあり、木製品から他の素材にシフトする流れが主流になっています。材木屋としては少し寂しい気がします。個人的には木に触れた感覚には体温の伝わる温もりが感じられ、手に馴染むという感覚があります。
前回の日記でも申し上げましたが、木材はヒトと長い関わりの歴史があり、利用する中で適する樹種を見つけ出してきました。またその知恵が現在まで引き継がれています。私達が普段何気なく触れている木製品にもその知恵が生かされています。それはこれからも後世に伝え残して行かねばならない事だと強く感じています。その為には微力かもしれませんが、こうして発信して行く事で少しでも役に立てばと考えています。
3回に分けて木材の魅力をお伝えいたしましたが、拙い文章でご理解できない内容がございましたら申し訳ございません。ご意見、ご質問がございましたらお寄せください。どうぞよろしくお願い申し上げます。
*写真は私が小5の時に工作の授業で作った「状差し(レターラック)」 1973年製作 自作